「野党は対案を示していない」は本当か?

○■○ 選挙戦の中で、与党の政治家たちは「反対ばかりで対案を示していない」という趣旨の非難を野党に向けています。 商業メディアの記事にも、同内容のことが繰り返し書かれています。 しかし、本当にそうでしょうか。 以下の政党の選挙公約について、財源論を重点に調べました。

以下、上段=トップページ、下段=選挙公約(PDFファイル)URL

☆自由民主党

  https://special.jimin.jp/

  http://jimin.ncss.nifty.com/2014/political_promise/sen_shu47_j-file_1210.pdf

☆民主党

http://www.democrats.jp/

http://www.dpj.or.jp/global/downloads/manifesto20141202.pdf

☆維新の党

https://j-ishin.jp/

https://j-ishin.jp/pdf/ishinhassaku.pdf

☆公明党

https://www.komei.or.jp/

https://www.komei.or.jp/campaign/shuin2014/manifesto/manifesto2014.pdf

☆次世代の党

http://www.jisedai.jp/

http://www.jisedai.jp/download/pdf/jisedai_manifest.pdf

☆日本共産党

http://www.jcp.or.jp/

http://www.jcp.or.jp/web_policy/data/201411_sousenkkyo-seisaku.pdf

☆生活の党

http://www.seikatsu1.jp/

http://www.seikatsu1.jp/wp-content/uploads/0c4778a35f0cfe0a34fd3085e210a5c4.pdf

☆社民党

http://www5.sdp.or.jp/

http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2014/commitment2014.pdf

☆新党改革

http://shintokaikaku.jp/

http://shintokaikaku.jp/web/wp-content/uploads/2014/12/yakusoku2014.pdf

(公示前勢力順)

○■○ この中には、数値(金額)まで明示した具体的な財源論を掲げている政党が、2党ありました。 それは・・・

日本共産党と社民党です。

これには私も驚きました。 私自身は左よりの思想の持ち主です。 各党の政策を調べたのも、「『野党は文句を言うばかりで、具体的な政策を提示していない』という有権者多数派の思い込み・偏見・固定概念を改めていただこう」という動機からではあります。

そうはいうものの、まさか、《具体的な財源論を明示しているのは、左派政党だけ》、《全ブルジョア政党が財源論を避けて通ろうとしている》、などという事態であるとは、夢にも思っていませんでした。 私の言っていることが嘘だとお思いでしたら、上記の各政党の選挙公約を、ご自身の目でお確かめください。 ちなみに、上に掲げたのはどれもダイジェストではなく、それぞれの政党が「マニフェスト」なり「重点政策集」なり「選挙公約」なりとして紹介しているものの中で、最も詳しい文書です。 私が恣意的に、あるいは不注意で、ある党の詳細な政策集と別の党のダイジェスト版とを比較しているわけではありません。

○■○ 以下、各政党の選挙公約を私が検討して気づいたことをいくつか書き連ねます。

○■○ まず1つ目は、日本共産党および社民党が、大企業や富裕層の負担増を主軸の1つとして増収を図ろうとしている、ということです。 この方向性には、異論もあるでしょう。 「企業や金持ちが海外に逃げて、結局は税収が減るだけ」という旨の批判です。 しかしながら、本当にそうでしょうか? 日本と比べて公的な再分配機能の強い諸国家が、必ずしも財政的に破綻をきたしているわけではない。 むしろ、庶民の購買力を担保することによって、不況に強い経済構造を作り上げている。 そのような例が、欧州を中心にいくつか見受けられます。 ドイツでは、(シュレーダー政権下での社会保障切り下げ政策&解雇規制緩和政策などを通じて、市場主義の傾向が強まりはしましたが、そうはいうものの)社会保障の水準を日本における水準よりもいまだにはるかに高く保ちつつ、なおかつ、均衡財政を達成しようとしています。 すなわち、2015年度予算で赤字を0にする、国債発行を0にする、というところまできています。 このような事実に鑑みて、「日本共産党の政策は亡国への道だ」的な決め付けは、あまりにも単純すぎるといえましょう。

もちろん、≪日本共産党の主張する課税強化の規模が、絶対に適正だ≫とも断言はできません。 ≪大企業や高所得者層の負担増という方向性は正しいのか≫、≪正しいとして、では、どれほどの額が、バランスの取れた規模なのか≫ ―― ここは、議論を深めるべき点でしょう。 問題なのは、与党が「野党は対案を示していない」との印象操作に終始して論戦から逃げていること、真っ向勝負を避けようとしていることです。  日本共産党や社民党の政治家が討論番組などで、≪さまざまな免税措置によって、日本の大手企業の実質的な税率は、他の産業国のそれと比べて、むしろ低いではないか≫と指摘しても、ブルジョア政党の政治家たちは黙りこくってしまう。 その場をやり過ごしておいて、別の場所では何食わぬ顔で、「日本の法人税率は高いから、減税が必要だ」。 しかも、商業メディアも このような不誠実な姿勢を厳しく指摘することなく、「現政府の政策も問題だが、野党もだらしない」的な いわば「どっちもどっち論」を繰り返すばかり。 繰り返しになりますが、ここにこそ、この選挙戦を通じての(有権者大多数にとっての)最大の不幸、大問題があるのではないか ―― 私はそう考えます。 (もちろん、財源問題のみならず、エネルギー政策についても、安全保障政策に関しても、同じことが言えます。 そして、政治において何よりも大切な、自由と民主主義の問題についても。)

≪左翼政党の財政ポリシーは誤っている≫と考えているのならば、正面切って批判すれば良い。 にもかかわらず、事実を捻じ曲げて「野党は反対だけで…」と言い募るばかりの与党。 これはもう、議論を恐れているとしか私には思えないのです。 太刀打ちできないからスルーしようと目論んでいる ―― そうとしか解釈の仕様がないのです。 もし このブログの読者さん(動画の視聴者さん)が、「お前が左翼だから、偏ってものが見えているのだ」とお考えでしたら、再度申し上げますが、ご自身で各党の政策をお読みになり、比較なさってください。 思い込みで「こうに違いない」と決め付けるのではなく、事実をベースにして物事を判断なさってください。

○■○ 2つ目。 与党の財源論ですが、≪2020年度に黒字化する≫という目標を、一応掲げてはいます。 けれども、そこに至るまでの具体的なプランについては、「来年の夏までに」(自由民主党)、「早期に」(公明党)に作成するとしているだけです。 もちろん、このような重大な中・長期的な計画については、国会において十分に審議される必要がありますから、単純に「さっさと決めろ」という話ではありません。 しかしながら、党としての提案 国会で話し合うための叩き台すら準備できていないとは、一体どういうことでしょうか。 そのような大事な国家的計画こそ、まさに選挙戦を通じて国民に検討されるべきなのではないでしょうか。

5年後に国債発行を0にしようとするのならば、歳出を大幅に減らすか、歳入を大幅に増やすか、あるいは その両方を実行するしかありません。 当然、受益を減らされる層からの、また 負担を増やされる層からの反発が予想されます。 自由民主党にしても公明党にしても、≪今はとりあえずいろいろなことを有耶無耶にしたままで選挙に勝つだけは勝っておいて、議席を確保したら、あとは社会保障水準の切り下げなり、租税・保険料負担の引き上げなり、フリーハンドでやらせてもらおう≫、こういった肚積もりでいるのではないか。 わたしは、そんな疑念が捨て切れません。  私の懸念が単なる杞憂だとしたら、今度は≪与党は2年間も何をやっていたのだ≫という話になります。 「政権担当能力があるのは我が党だけだ」どころか、利害対立をろくに調整もできない無能政党だということになりかねません。

結局は、(エネルギーのベストミックの策定にも通じる話ですが) 有権者の多くから反発が出そうな諸課題については議論を先延ばしにする。 そして、選挙に勝ちさえすれば、後は数を頼みとばかりに、国民に示してもいなかった政策を強行する。 与党はそんな目論見ではないかと疑わざるを得ないのです。

しかし、これは、民主主義の否定にもつながりかねない、非常に危険なやり方です。 本当に本当にしつこいですが、私たちは印象・イメージや決め付け・固定観念でではなく、事実もとに判断して、賢い投票をしなくてはいけないと思います。

本文以上